「ガサエビ」という名前を、聞いたことはありますか?
スーパーでよく見かける甘エビ(ホッコクアカエビ)なら知っている、という方は多いはず。でも「ガサエビ」となると、福井の外ではほとんど知られていません。
それもそのはず。この海老、味は甘エビをしのぐとさえ言われながら、市場にはめったに出回らない——まさに「幻」と呼ぶにふさわしい一杯なのです。今日は、そんなガサエビの正体と、いちばんおいしい味わい方をご案内します。

ガサエビとは?「越前エビ」とも呼ばれる、知る人ぞ知る福井の宝。
ガサエビは、福井をはじめとする日本海側で揚がる海老の地方名です。ゴツゴツとした見た目から「ガサエビ」「ガスエビ」などと呼ばれ、地元では古くから親しまれてきました。越前で揚がることから「越前エビ」と呼ぶ人もいます。
見た目は、つややかな甘エビに比べるとやや地味。殻が硬めで、姿もどこか無骨です。けれど、その殻をむいて口に運べば印象は一変します。とろりとした舌ざわりと、甘エビを上回るほどの濃厚な甘み。一度味わえば「なぜ今まで知らなかったのか」と思わずにはいられない、そんな海老なのです。
なぜ「幻」なのか。市場に出回らない、3つの理由。
これほど美味しいのに、なぜ全国に知られていないのか。理由は大きく3つあります。
ひとつめは、とにかく鮮度が落ちるのが早いこと。漁獲してから時間が経つと、身がやわらかくなり、独特の甘みも損なわれてしまいます。遠くへ運ぶのが難しい、繊細な海老なのです。
ふたつめは、漁獲量が安定しないこと。狙って大量に獲れる海老ではなく、その日の海まかせ。数がまとまらなければ、市場に流れる前に地元で消費されてしまいます。
そして3つめが、地元の人がその価値を知っていること。「いちばんおいしいものは、産地で食べられてしまう」——ガサエビは、まさにその典型なのです。
ガサエビの美味しい食べ方。生・塩茹で・味噌汁——素材を活かす越前流。
繊細なガサエビは、凝った調理よりも、素材を活かすシンプルな食べ方がいちばんです。
まずは王道の「お刺身」。新鮮なガサエビが手に入ったら、ぜひ生で。とろけるような舌ざわりと濃厚な甘みを、もっともダイレクトに楽しめます。

火を通すなら「塩茹で」。さっと茹でるだけで、甘みがきゅっと引き締まり、ほくほくとした食感に変わります。シンプルゆえに、海老そのものの実力がよくわかる一品です。
そして地元で愛されているのが「味噌汁」。殻からこれでもかと濃厚な出汁が出て、汁を一口すするだけで、口いっぱいに海老の旨みが広がります。頭や殻まで余さず使える、福井ならではの楽しみ方です。

【豆知識:ガサエビの旬は?】
・主な旬 … 秋から冬(漁が本格化し、身も締まる時期)
・甘エビとの違い … 甘エビ(ホッコクアカエビ)よりも殻が硬く姿は無骨だが、甘みはより濃厚と評されることも。流通量が少なく“地元の味”の色が濃い
※水揚げは天候・海況に大きく左右されます。確実に味わうなら、産地の旬の時期を狙うのがおすすめです。
知る人だけが知っている、福井の海の実力
ガサエビは、派手さこそないけれど、ひと口で人を惹きつける実力を持った海老でした。
「甘エビは知っていたけれど、ガサエビは初めて」——もしそう感じていただけたなら、それこそが福井の海の奥深さです。次に福井を訪れる機会があれば、ぜひ地元でしか味わえないこの一杯を探してみてください。
越前水産では、これからも福井の海が育てた知られざる味の魅力をお届けしていきます。